空の姫と海の王子


赤、黄、橙、

青、緑、紫、藍

色んな色に溢れた世界


光が消えて、血に染まり
色を失った町は消えていた


確かに町があった場所を
覆い尽くすのは


色鮮やかな花


「………なんで、」


掠れた声

乾いた頬を伝う雫


「………どうして、」


聴こえる

たくさんの声


「………みんな、もう大丈夫だよ」


足元に咲く小さな花にそっと触れ
春は優しく語りかけた


「今度は未来で会おうね」


大陽みたいに暖かい
ほっと気持ちが安らぐ

そんな笑顔に花は揺れた


……ほら、また聴こえた

風の音なんかじゃない
確かに、聴こえる





───ありがとう───





風が強く吹いた

空に舞った無数の花びらは
風と共に夜空へ消えていった


空から視線を逸らさないまま
頬を伝った雫は零れた


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