空の姫と海の王子


ま、いっか
悩んでても分かんないし


と潔く1秒もしない内に諦めた春は顔を上げるが
前を歩いていたはずの葵の姿が見当たらない


「あれっ?」

「何キョロキョロしてんの、こっち」


声が聞こえたのは後ろ

勢いよく振り返った春は
背中を向けて来た道を戻る葵を追いかける


「葵ーっ?そっちは逆だよっ?下に行く階段はこっちふべしっ!?」

「ふべし!?」


足を止めた途端に背中にぶつかってきた
春の変な叫び(?)に驚いた葵は
思わず小さく吹き出した

春はぶつけた額を擦りながら
頬を膨らませて葵を見上げた


「急に止まらないでよーっ」

「春が勝手にぶつかってきたんだろ……背中痛い……」

「ごめんなさい」


素直に謝った春に対して
いいよ、と笑った葵が右を指差す

指差す先には先ほど案内された食堂

美味しそうな匂いに春の表情が綻ぶ


「疲れたんだろ?少し休憩するか」

「疲れてないよ!ほら、こんなに元気だ」


ぐぅうう


「……………」

「……………」

「腹の虫は正直だな」

「なあっ!?」


笑いながら食堂に入っていった葵の背中を
真っ赤な顔の春は思いっきり睨みつけた


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