空の姫と海の王子


食材を調理する音と
美味しそうな香ばしい匂い

口から垂れかけたよだれを拭いて
春はキョロキョロと食堂を見渡した


大きな部屋にはたくさんの人が腰掛け
料理を堪能したり世間話に花を咲かせたり

ガヤガヤと話し声と食器の音が
絶え間無く聞こえてくる


「………楽しそう」


素直にそう思った


「ここはみんなの家だからな」

「家?」

「そ、家。ここにいる人は殆どが戦いに巻き込まれて¨何か¨を失った人達。家族だったり、家だったり、友達だったり、恋人を失ったり。そんな行き場を無くした人達が集まってできたのが」

「それが……¨SUN¨なの?」


葵は返事の代わりに小さく頷いた


「俺達は自分達みたいな被害者を出さない為に集まった。能力者がいる限り、平和なんてこない」


その為に武器を取って
戦いを終わらせる為に戦う


葵の言葉に春は目を伏せた


人間界に能力者が生まれたのも
世界間の戦いを終わらせる為だった

その戦いが終わったと思ったら
次は人間同士の戦いが始った


「この基地は俺達の家だ、俺達が笑って過ごせる唯一の居場所なんだよ」


葵の顔から悲しみは消えていた


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