空の姫と海の王子


何かを失った人達の集まった家

唯一の居場所


頭を過ったのは¨ひまわり園¨
17年間を過ごした人間界での春の家

怒ると恐いけど優しい園長先生とたくさんの家族


奈々と、陸と、


『──春』


海斗


「春?」

「……わわっごめん、何?」

「いや、何食うの?って」

「何でも食う!!……じゃない、何でも食べれるよっ!」

「元気があってよろしい、じゃあ日替わり定食二つ」


カウンターの向こうにいる
大柄なおばさんにそう言って
トレーを持った葵が席を探すが
なかなか空いている席は無い


「おい葵!こっちこいよ!!」


賑わう食堂の中でも通る大きな声の方を向くと
30代くらい男達が大きく手を振っていた

男の声に反応した何人かが
葵を見てまた声をかける


「何だよ帰ってきてたのかー?」

「お久しぶりです葵さまー!!」

「また新しい奴連れて来てるぜアイツ」

「葵は優しいからなあ、無駄に」

「そうそう、無駄に」

「お前ら一言多いな!」


食堂に笑い声が響く

大人も子供も、男も女も
葵が歩く度に誰かが声をかけ
楽しそうに笑う¨SUN¨のメンバー

葵がどれだけ信頼されているのか
どれだけみんなに好かれているのか

葵が¨SUN¨のトップである理由が
春はこの瞬間に理解した


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