空の姫と海の王子


春は泣いていた


隣に座る女性がそっと肩を抱き
耳元に口を近付けて優しい声で囁いた


「大丈夫。葵様が言う通り《あなたは独りじゃない》」



春の体がぴくりと震えた


「きっと仲間にも会えるし、友達も救える。だけど《そのためには何かを捨てる必要がある》」

「……っ、…何かって?」

「それはね、」


女性は綺麗な赤い唇で言葉を紡ぐ

言葉は気付かれないまま
鎖となって春を縛りつける


「《あなたは"空"の資格を捨てなければ、何も救えない》」


言葉は鎖となって春を縛りつけた


葵の口元は弧を描いていた




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