空の姫と海の王子
瞬間、
掴まれた右手を軸にして体を上にあげて
葵の体を下に追いやりバランスを崩すと
左手を葵の額に押し付けた
「《失せろ》」
声に能力“チカラ”を込めて呟くと
奈央の手が触れた部分から
葵の体が澄んだ透明の結晶と化していく
違う、これは偽物“ダミー”
その結晶を見て舌打ちした奈央は
葵”だった“結晶を蹴って宙に浮かんだ
途端、目の前に現れたのは
今さっき結晶になったはずの葵
奈央は動揺する様子もなく
いつの間にか右手に握っていた
銀色の拳銃を葵の眉間に突き付け
挑発的な笑みを浮かべた
「これが最後の忠告、失せろ」
「それは無理だ」
葵がにこやかにそう言うと
奈央は笑みを消して葵を睨んだ
「《じゃあ消えろ!》」
「君がね」
お互いの眉間に突き付けられた銀色の銃
引き金は同時に引かれた
パンッ