空の姫と海の王子


──パンッ


乾いた銃声が辺りに響いた

春はすぐに足を止めて振り返る

肩を上下させて息を切らす春の視界が
一瞬、ぐらりと歪んだ気がした
 

すぐ後ろで何があったのか
 
何故この二人がここにいるのか


額から落ちた汗を拭う事なく
春はただ呆然とその状況を把握しようと

戸惑いと動揺に揺れる瞳に映る状況を
疑うことすら忘れて、ただ見つめた

 
ドサリ


二人の内の一人が倒れた音で
今まで時が止まっていたかのように
周りの景色が動き出した

春がこの状況を理解したのと
ほぼ同じタイミングだった


倒れているのは……誰?


溢れる紅い液体は春の足元まできていた

震える足で近づいた
見たくないのに、その速度は上がる


「……嘘、だよね?」


体の震えは止まる所か激しくなる一方で
春のその小さな唇からは嗚咽が漏れた


「奈央……なんで……?」



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