空の姫と海の王子
地面に崩れ落ちた女性は髪の色は違っていたが
間違いなく、春の知る、“佐藤奈央”
その横で構えていた銃を懐にしまっているのは
さっきまで遠いアジトにいた筈の”七瀬葵“
なにがあったの
なんで奈央が倒れてるの
なんでそこに葵がいるの
なんで
なんで
なんで……
「……うっ……」
「っ!!」
小さな呻き声と共に痙攣するように動いた指に
春の思考停止していた頭が動き出した
空は、快晴
春はしゃがみこんで奈央の上体を起こすと
血が止まらない眉間に手をかざした
ふと、脳裏に数多の疑問が過ぎるが
それに考えを巡らせるよりも早く
手のひらに能力を集中させていく
暖かい光が春の手のひらから
奈央の傷口に降り注ぐ
「蒲公英(タンポポ)」
空を照らす太陽の光での治癒
他の治療法よりも消耗が激しいが
これなら確実に傷口は塞げるだろう
「止めた方がいい、無駄な事だ」