空の姫と海の王子


葵の能力がリベルの鎖の力を増幅させると
春を締め付ける力が更に強くなり
春は小さな悲鳴を上げてその場に倒れた

しかし、地面に手をつけて
何とか立ち上がろうとする春に
葵は更に顔をしかめた


何故、そこまでするんだ

空の能力を捨ててしまえば
この女も救えるし

何より、そんなに苦しまなくていいのに


理解が出来なかった


「葵はっ……分かってないよ……!」


鎖が食い込む小さな身体に
どこにそんな力が残っていたのか

空色の瞳に宿る希望の光は消えることなく
葵を真っ直ぐと見つめた


「なにも……分かってない。分かってくれないの、信じてくれないの?春はこんなので縛られなくても葵にはもう誓ったんだよ………」


忘れちゃったの?

それとも


「信じてくれないの?」 


春の瞳から溢れた涙が乾いた地面につく前に
葵は春を抱き締めていた

何故?

そう考える前に身体が動いていたから


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