空の姫と海の王子


「忘れてない……忘れる訳ない」


何故、

春を抱き締める手が震える


「そっかあ、よかったー……やっと、信じてくれた」

「何故……?いつから、いつから気づいてた……?気づいていて何故俺に近づいた」


傷つくと知りながら

何故

何故


「だって、春達はもう友達でしょ?」


友達


「………俺は、俺は春を利用しようとした。春の仲間のあいつも殺そうとした。春を苦しめた。なのに、何故……」

「だってね、ほら、持っててくれた」


力が入らない手で葵の胸元のチャックを下げた
首もとを隠していた服の下に見えたのは


「あの時からもう、友達だったでしょ?」

「っ……!」


小さく光る空色のネックレスに触れて
優しく微笑んだ春は真っ直ぐな瞳を向けた

強い意志がこもった空色の瞳を


「奈央を……助けてあげて、……ね?」


それだけ呟いて、気を失った春を
葵はもう一度抱き締めた

能力を使い果たした春は浅い呼吸のまま
少しの間、眠りについた







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