空の姫と海の王子


蓮は楽しそうに笑いながら
奈央の長い髪をくるくると弄る


「ねー、どうやったの?」

「は?何、髪?」

「髪なんかどうでもいいんだけど。興味ないし、俺が聞いてるのはこっち」


そう言って自分の頭をコンコンと叩いて
声に出さないで口だけ動かした

その意味が分かった奈央は得意げに笑った


「教えて欲しければ態度に示してくんない?」

「あははー、すっごい性格してるねー」

「褒めてるの?」

「ほんと馬鹿だなあー、馬鹿にしてるに決まってんじゃん」

「………」


こいつが春の兄

世界はどうかしてる

同じ遺伝子をどう受け継いだら
こんなに性格が偏るんだよ


奈央は盛大に溜め息をつくと
窓の外に視線を向けた

空が暗くなってきた
もうすぐ、夜がくる


「”時の能力”」


小さく呟かれた奈央の言葉の意味を
蓮は理解するのに時間がかかった

何故ならその能力を持つ者はいないはずだから
持っていたとしてもその能力はとても危険だから


「ほんと、時間がなさすぎて困るわ」


奈央はそう自嘲的に笑って、静かに話し出した

記憶を取り戻した方法を

その能力の代償を

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