空の姫と海の王子


廃墟の街の中に作られた地下のアジト

その最下層の部屋に敷かれた布団に
横たわる春はゆっくりと目を開けた


「……葵?」

「葵様は今出掛けております。具合は如何ですか?」

「あなたは……リベルさん?」

「リベル、で結構です」


リベルに手渡されたペットボトルを受け取り
乾いた喉を潤すとだんだん頭がハッキリしてきた

そうだ……奈央!


布団を蹴飛ばして起き上がった春は
部屋を出ていこうとしたが
その腕をリベルが掴んだ


「離してりーちゃん!奈央を助けなきゃ!」

「り、りーちゃん!?お待ち下さい春様!あの女は無事です」


”無事“

その言葉を聞いて春は安堵のため息をつくと
その場にちょこんと座り込んだ

具合が悪いのかと心配したリベルが
しゃがんで顔を覗く


「春様……?」

「よかったあー……。えっと、今どこ?」

「それが……「葵ーーー!!!」


リベルが言いにくそうに口を開いたが
それを遮っての大音量の声が
開いた扉とともに入ってきた



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