空の姫と海の王子


「……あ?リベル、葵は?」

「今出掛けている」

「なーんだ。って、あれ?は…お前」


入ってきた男、蓮は視線を横にずらして
リベルの横で座り込む春を見ると
明らかに嫌そうな顔をした

そんな顔をされた春はびくりと
体を震わせて蓮を見上げた


そう、上目遣い。


「~~~っ!」

「れ、蓮!大丈夫!?」

「来るな!!」


突然胸を押さえてしゃがみ込んだ蓮を
心配して近付こうとした春に向かって
蓮は強く叫んだ

差し出そうとした手を止めて
春はぎゅっと口を結んだ

二人を不思議そうに見ていたリベルは
小さくため息をついた


「なんの用だ?」

「……別に。帰ってきたら教えて。また来る」


胸を押さえながら淡々と言うと
扉に手をかけて帰ろうしたが
最後にチラリと春を見た


「……っく……ひっく……っ」

「………」


泣いていた

春は俯きながら嗚咽を堪えるように
肩を震わせて、泣いていた

蓮は唇を噛んで春を睨んだ


「早くここから出ていけ」



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