空の姫と海の王子


その部屋は生活感というものがまるでなくて
薄い水色のラグだけがその部屋にあった唯一の色

確かにこの部屋で過ごす時間等ないだろうが
さすがに布団も無いとなると
少しくらいは心配になる


「いつまでそうしてるつもり?座れば?」

「あー、うん」


水色のラグの上でアグラをかいている蓮から
出来る限り離れた場所に座った奈央に
蓮は何も言わず失笑した

その座り方も仕草も視線も
何もかもが普段通りの自然体

しかし、この場で何かが起きれば
すぐに行動に移せる体制だったから


「……何見てんだし」

「いや、面白いなーって」

「あっそ」


適当に返事を返して、少し間を置いてから


「あんたの考えがあたしには分かんない。何で春に嘘ついてんの?何がしたい訳?」

「えー、それいちいち答えなきゃダメなのー。……めんど」

「あえて聞こえる大きさで言うとかほんとその性格残念極まりないな」

「だって、僕が行動する理由なんてひとつしかないじゃん?」


……そうだった。

奈央はあえて聞こえるように大きな溜め息をついた


そう、春の為。

そんな単純な理由

だからこそ、こいつには迷いがないんだ




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