空の姫と海の王子


「あんたねえ……あたしを誰だと思ってんの?世界中探しても7人しかいないSランクの佐藤奈央!ついでにゆーと元EARTH幹部補佐!」


ばん!と自分の胸を叩いて大声で、
しかも敵の本拠地でその身分を言う奈央に
蓮は眉間に手をやって溜め息をついた


「EARTHの事なら大体は知ってるし、つか、EARTHに戻る気なんかこれっぽっちも無いんだからいいじゃん!あんたは春を助けるんでしょ?あたし達も春と海斗が必要なの!目的一緒じゃん!」

「……だから、それは僕一人の方がかえって楽だと思うんだけど」

「それに!一人より二人の方が絶対早いし、楽だし、効率的だし!」

「うんうん。僕の話聞いてないよね」


今日何度目の溜め息なんだろう
幸せが何個逃げたんだろう

……あー、この女煩い

こっちの事情も知らないで


心の中でブツブツと文句を言う蓮と
延々と喋り続ける奈央

そんな二人のいる部屋のドアが
ノック無しで勢い良く開かれた


「蓮、仕事だよ……って、あれ?何でその人いるの」


血の気が引くとはまさにこういう事だ

蓮も奈央も、物音に反応して
攻撃体制に入っていたが
ドアの向こうから顔を覗かせた人物を見て
二人はまばたきすら忘れて固まった


「葵……出掛けてたんじゃ……」

「あぁ、用事が割と早く済んだからな。それより……俺に言うことあるんじゃないのか」

「っ……!!」


葵の視線が冷たいものに変わり
それは奈央に向けられていた



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