空の姫と海の王子


「──ありがとう、か」

「それを言うのは私達の方だよ」

「……え?」


驚いたように顔を上げたアオイに
二人は笑って声を揃えて言った


『ありがとう』


表の世界にある空と海

世界を見守るだけの存在


世界で間違いが起きても
見守ることしかできないことが
とても、とても、悲しかった


「──そんな私達をアオイは呼んでくれた」

「呼ばれた俺達はアオイに会うために動ける身体を手に入れたんだ」

「俺が……呼んだから?」

「そう。アオイは世界を直す為に私達を呼んだの」


二人は少し悲しい顔をして
握っていたアオイの手を離した

深海のような深い海色のカイの髪が靡いた

澄み渡った空みたいな空色のクウの髪も
あるはずの無い風に吹かれていた

キラキラと光に当たると光る髪に
アオイも目をキラキラと輝かせた


「綺麗………」

「アオイの髪も綺麗だ」

「俺の髪が?」

「見たことないの?」





< 269 / 339 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop