空の姫と海の王子
カイが湖を指差した
アオイは湖を見て、驚いた
湖に映るのは表の世界だけ
そう思っていたけど、違った
こっちの世界と違う世界だから
羨ましくてそれしか目に入らなかっただけで
今は、違うものもちゃんと見えた
周りの森のように深い緑の髪と
こっちを見つめ返す子供の瞳の色は
カイとクウと同じ黄金に輝いていた
「……誰?」
そう湖に映る子供に問い掛けると
子供も同時に口を動かした
………これ、俺?
湖に映る子供は驚いた顔をしている
やっぱり、俺だ
「ほら、アオイの髪も綺麗だろう?」
「……うん」
クウの声にそう答えるけど
俺は湖に映る自分の姿よりも
やっぱり、表の世界が気になってしまう
さっきよりも争いは大きくなっていている
「……行くか」
「……そうだね」
そんな会話が聞こえてきて
俺はハッとして振り返った
困ったように笑ったクウが
言った言葉を信じたくなかった
「もう表の世界に行かないと駄目だ」