空の姫と海の王子



”EARTH“それは能力者派の総称

葵の言っていることが本当なのか
能力者の中にそんな考えを持つ者がいるのか

分からない。分からないけど
力があるから人はそれを欲し
それを手に入れる為に争うのだろうか

春には分からない


「……戦いなんて、悲しみしか生まないよ」


多くの人が傷付いて
多くの命が消えてゆく

人の絆が離れていき
誰も信用出来なくなる

力を欲した者達の
戦いの末に残るものは

たったひとつの勝利と
それと天秤に掛けることのできない

たくさんの、大切なもの


「俺にはもう失うものは無い。だから、全力で戦える」


能力者達から精霊を取り戻して
人間界から異端の力を無くしてしまえばいい

そうすれば、争いなど自然と消えるのだから

世界は平和になり
空と海の扉も必要なくなる


葵の瞳には強い決意が潜んでいた
本気なんだ、そう悟った春は目を伏せた

春はどうすればいい?

胸の前で合わせた手をギュッと握って
浮かんだのは、優しい仲間達の顔と


愛しい、とても大切な人の顔


< 277 / 339 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop