空の姫と海の王子
”EARTH“それは能力者派の総称
葵の言っていることが本当なのか
能力者の中にそんな考えを持つ者がいるのか
分からない。分からないけど
力があるから人はそれを欲し
それを手に入れる為に争うのだろうか
春には分からない
「……戦いなんて、悲しみしか生まないよ」
多くの人が傷付いて
多くの命が消えてゆく
人の絆が離れていき
誰も信用出来なくなる
力を欲した者達の
戦いの末に残るものは
たったひとつの勝利と
それと天秤に掛けることのできない
たくさんの、大切なもの
「俺にはもう失うものは無い。だから、全力で戦える」
能力者達から精霊を取り戻して
人間界から異端の力を無くしてしまえばいい
そうすれば、争いなど自然と消えるのだから
世界は平和になり
空と海の扉も必要なくなる
葵の瞳には強い決意が潜んでいた
本気なんだ、そう悟った春は目を伏せた
春はどうすればいい?
胸の前で合わせた手をギュッと握って
浮かんだのは、優しい仲間達の顔と
愛しい、とても大切な人の顔