空の姫と海の王子



みんなを守りたい

葵は世界を平和にしたいだけ


「………分かった」


それはとても小さな声だったけど
葵にはしっかりと届いた


「……だけど、春にも条件があるから」


そうだよ

春は空の姫

世界が平和になったら
必要無い存在かもしれない

それでも、この能力は
世界が平和になるまでは
必要な能力なんだよ

春は春のやり方で
みんなを守ってみせる


「春は……春は、葵のやり方は間違ってると思う。だから、春は違うやり方を探すよ。もっと違う、たくさんの人を傷付けない方法で、春はこの世界を平和にしてみせる」


強い決意の光る空色の瞳を見て
葵は小さく笑った、それでもいいと

春は葵に背を向けて歩き出した

目の前に広がる道はとても暗く
その中から、探さなければいけない

みんなを守って世界を平和に
争いの無い世界にするとゆう
とても、とても、都合のいい道を

なんの代償も無しに
ただ、平和を願うのは子供だけでいい

春にはこの能力が
この命がある


「もう……捨てたの」


みんなが笑っていられるなら
春は、春自身の幸せを捨てるよ

だけど、その幸せを思い出す度に
涙が零れ落ちそうになるのを堪えて

何度も何度も、
言い聞かせるように呟いた


その行為が仲間達の笑顔を奪う行為だと
気付かないまま、言い聞かせた



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