空の姫と海の王子


──リベルが買ってきてくれた服は
どれもこれもお姫様みたいに派手で
だけどそれをニコニコと無自覚な笑顔で
どうぞ、と渡されては

受け取らない訳にはいかなくて


「あのー、雑誌社の者ですが」

「うわあっ可愛い!写真一緒に撮りましょう!」


国立図書館に行きたくて街に出てきたが
白いふわふわのワンピースにレースのコート
ピンクの大きなリボンを
変装の為の金髪ウィッグに付けて
何故か可愛いウサギの人形を抱いている春は
100mに一回は雑誌記者かロリータに
ひっきりなしに声を掛けられる始末だった


──いいですか春様、一般市民に話し掛けられたらこうして逃げてください


春は心の中で溜め息をつきながら
今日何度目か分からない“それ”をした

ぎゅうっとウサギを抱き締めて
相手を涙目で見上げて


「ニホンゴワカリマセーン」


きゅーーーーーん!!!!

過呼吸になりながら心臓を押さえて
その場に膝をつく人達に心の中で謝って
すぐにそこから走り出した

なんだか色々とおかしいけど
これはきっとリベルの言霊なんだと
春はそう思って気にはしなかった


そんなこんなでやっと着いた国立図書館

金髪ウィッグとリボンを取って
葵のくれた市民証を提示すると
そこはとても、不気味な程静かな空間


「……すごい」


歴史を感じる重厚な造りのここは
どこを見ても本棚だらけで
その本棚も天井まで伸びているのだから
一体どのくらいの本が貯蔵されているのか
春には想像も出来なかった


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