空の姫と海の王子
「──っつ!?」
やばい、やばい、
逃げなきゃ、逃げなきゃ
早く、逃げなきゃ、早く
そう思っているのに
身体には全く力が入らない
まるで自分の身体じゃないみたいで
春は得体の知れない恐怖に涙を浮かべた
身体が震える
恐い、恐い、何が起きてるの
助けて、誰か助けて
「──かい……と…っ……!」
身体を覆う空色の光が揺れた
溢れ出した光は次第に液体状になり
張り巡らされた白線に染み込んでいく
白線がその色を空色に変えていく
天井に描かれた陣まで空色に変わると
陣はそれを待っていたかのように
目を開けてられないほどの強いを発した
「嫌っ……いや!いやあああぁぁぁぁああ!!!」
身体中を走る激痛に春は悲鳴を上げた
陣から溢れた光は春に向かって
無数の矢のように突き刺さる
そして、傷を残すことなく
春の中へと消えていく
その度に襲う激痛
それは数秒だったが
消えそうな呼吸しか出来ず
虚ろな瞳のまま空を見る春には
無限に続くように感じた
陣は元の白線に戻り
その中心に人形のように
動かなくなった春
そんな春の朦朧とした意識の中で
聞こえたのは足音