空の姫と海の王子


「そうだよね……!それにみんなの感覚が掴めれば《桜吹雪》で飛べると思うし……よっし」


ギュッと拳に力を入れた春の肩に
そっと手を置いた葵を見上げて目が合う

春は自信たっぷりな笑みを浮かべた


「頑張ろうね!」

「俺は目立つ訳にはいかないから何も出来ないけどな」

「背中は任せたっ」

「背中って、…はいはい」


仕方無いと言うように笑った葵に
春も満足そうに笑った


海斗、奈々、陸

今から春がみんなに嘘をつくのを
許してほしいと思うの

だけどね、みんなを助けるには
この世界も葵もみんな助けるのは
簡単なことじゃないから

少しだけ、ちょっとだけ

春のワガママに付き合わせるけど


「そろそろ行くか」

「………うんっ」


吸って、吐いて、吸って

深呼吸をしてゆっくりと目を開けた


「よし……っ」


必ず春はみんなを迎えにいくから

春のことを信じて

少しだけ、待っててほしいの


葵の手を取って床に描かれた
白い陣の中に入って目を閉じた

緊張と不安に揺れる鼓動が
真っ暗な世界でやけに大きく聞こえた




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