空の姫と海の王子


「──行っちゃったね」

「そーだね」


陣から溢れた真っ白な光が収まった時
二人の姿は部屋から消えていた

春を葵と二人にしてよかったのか

心のどこかに残る疑問

きっと、アイツはそんな事を考えてる


奈央は浮かない顔の蓮に背を向け
ドア横に掛けられた黒いコートを羽織った


「どこいくの?」

「じっとしてたって仕方無いっしょ。調べモノしてくるわ」

「あっそ」


ドアを閉めて部屋を後にする

調べる事は山程あるが
その中でも優先順位をつけて
どれから終わらせようか考えながら
ニーハイブーツに足を通して

大きすぎる玄関のドアを開けた


「………は?」


目を疑った

さっきまで部屋にいたはずの蓮が
何故目の前でコートに腕を通してるのか


「どこ?」

「は?」

「だーから、初めはどこに行くのって聞いてるの。ほんと、バカだね」


そう言って作り出した空間の穴を
指差す蓮が凄く、めちゃくちゃムカついたけど


「バカって言う方がバカなんだよ、バーカ」


これはコイツなりの優しさだと知っている


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