空の姫と海の王子


──今日は快晴だった

冬の晴れた空は好きだ

空気が澄んでいて
ほんの少しだけど暖かい
太陽の光が心地よかった


春は胸いっぱいに空気を吸い込んで


「わあーーーーーーーーっ!!」


思いっきり叫んだ

近くにいたリベルは耳を塞いで
恨めしそうな目で春を見た


「春様!突然叫ばないで下さい!」

「あ、ごめんねっ!なんか、こう、叫びたくなる空気だっから……つい」

「ああ、怒ってませんから!そんな子犬のような瞳で私を見上げるのは止めて下さい」


うるうると潤んだ瞳で見上げられて
思わず顔を逸らしたリベルだったが
春は既に珍しい黒い蝶を追いかけて走っていた

それに気付かないまま、リベルは言葉を続ける


「それにしても春様は何故私の買ってきた服を着てくれないのですか?そんなシンプルなワンピースよりももっとフリフリでフワフワなドレスの方が似合うのに……そうですわ!今度一緒にお買い物に行きましょう!ね、春様……」


笑顔で振り返ったリベルは
そこにいた筈の春がいない事に気づいたが
ほんの少し状況を理解するまで固まって


「っ!?春様!?」


サッと顔色を変えて周囲を見渡した

ここは一目のつかない都内の路地裏でも
ほんの少し歩けばすぐに大通りに出る

いつ、どこにEARTHがいるのか分からない

そして今は作戦中だというのに


リベルは唇を噛みしめると
すぐに意識を集中させた


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