空の姫と海の王子


葵が春に向かって指先を一振りすると
春はハッとしたように顔を上げて
二人の元に駆け寄った


「呼んだ?」

「呼んだ?じゃないだろ……少し大人しくしててくれないか?」

「うん、分かったー」


絶対分かってないだろ

葵とリベルの心の声が重なった


「で、状況は?」

「全ての班が指定の位置に到着しておりますわ。あとは、葵様のご指示のみです」

「そうか」


リベルの言葉に頷いた葵は
チラリと春を見て優しく微笑んだ


「少し無茶をさせるけど、俺が必ず守るから。だから安心しろ」

「………うん、信じてる」

「ありがとう、春」


春のココア色の髪に手を乗せ
とても優しくその頭を撫でる

その手は海斗の手よりも少し小さく
春は静かに目を閉じて葵の温もりを感じた


信じてる。

葵も、リベルも、蓮も、奈央も

奈々も、陸も、そして


閉じた時と同じように
ゆっくりと静かに目を開いた


海斗、待ってて
春がこの世界を変えてみせるから
海斗の記憶も取り戻してみせるから


空色の瞳が強く輝いた瞬間
春を中心に巨大な陣が空間に描かれ
それに伴う巨大な能力の波動が周囲に広がった


「………いくよ」


春の身体に走る青い電流が空気を震わす

そっと右手を上げて指差したのは
能力者協会の本社ビル


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