空の姫と海の王子
ふと、笑顔が浮かんだ
幸せそうな柔らかい笑顔は
まるで太陽みたいにキラキラと輝いていて
顔を思い出そうと目を瞑るが
ズキンと、その度に頭が酷く痛んだ
顔をしかめた海斗を見て
ひかりはその手を強く握った
「無理に思い出そうとすんな、脳によくないって!」
「……でも、思い出さねえと、気持ち悪ぃままだろ」
「海斗、今無理して思い出す必要はないわ。やめなさい」
奈々がピシャリと言い放つと
海斗は目を細めて奈々を見下し
そして小さく溜め息をついて窓から離れた
そのままドアに向かう海斗の手を
ひかりはそっさに掴んで引き止めた
「どこ行く気?」
「……下。マスターにコーヒー貰ってくるだけだ」
「じゃああたしも行く。奈々と陸は?何か飲む?」
「俺は─「私達はいらないわ。ありがとう」
陸の言葉を遮った奈々に
えーー、と文句を言いたそうな陸
ひかりはそっか、と笑って
海斗の背中を押しながら部屋を出て行った