空の姫と海の王子
階段を下る二人分の足音が聞こえなくなると
陸も奈々も真剣な表情に変わった
「海斗の反応からすると、やっぱりこの感覚は春で間違いわね」
「由紀達は俺らを心配してひかりに監視役と頼んだんだろーけど、」
ドアが閉まる瞬間に交わされた
海斗の意味を含んだ視線
奈々は小さく笑った
「記憶も能力も無いくせに、春の事となると放っておけないのは本能かしらね」
「男ってのはそういうもんなんだよ」
「あら、そうなの」
「そうなの」
クスクスと口に手を当てて笑う奈々の
細くて白い手をどけて、陸はそっと
触れるだけのキスを落とした
「……な…な……何を……」
不意打ちに固まる奈々の頭をポンと叩いて
陸はとても楽しそうに笑った
「ここから先は命懸け、だろ?奈々は俺が守るから安心しろって」
「だからって!その……き、キス…する必要はないじゃないの!!」
「俺のやる気の充電……とか?」
楽しそうに話しながら陸は窓を開けた
窓を開けてすぐに張られた結界に
奈々は真剣な表情に戻って手でなぞる
能力は無いが、感覚は覚えてる
感じる波動は深い闇、ひかりのものだ
奈々は意識を集中させて
結界の弱い部分を探していく
「……あった」
奈々が右上を指さすと
陸が拳を強く握ってその部分を
勢い良く殴りつけた