空の姫と海の王子


「……つか、その人誰?」

「この女の精霊らしいよー。なんかよくわかんないけどねー」

「はあ!?精霊?なんで精霊がここにいるわけ!?わけわかんないんだけど!」


ガシャン、と激しい音を立てて
カップを置いた奈央のリアクションは
見事に蓮と同じ反応だった


ま、そーなるよね


蓮は溜め息をついて横目で雅を見ると
視線を感じたのか、雅がさっきと
全く同じ話を奈央にするが


「あーなるほどー。訳分かんないわ」


理解力が乏しい奈央が
すぐに理解できるはずもなかった

理解することを即座に放棄した奈央は
もう一口、カフェラテを口にすると
今度はカップを静かに置き席を立つ


「その様子じゃひかりもしばらく起きないだろーし、あ、大丈夫。あたしらの用事が終わる頃には起きるだろうから」

「分かっておる」


そう言って頷いた雅はひかりの横に腰掛けた

ひかりを見る目はまるで母親が子供を見るような
そんな、優しい目をしていた

奈央は深く触れなかったがひかりの過去は
少々、いやかなり複雑だと聞いたことがある

彼女が具現化したのにも何か関係があるのだろうか

しかし、奈央にはその事について考えるよりも
もっと大事なことがある


「マスター、あたし達に力を貸してほしい」


奈央の瞳はまっすぐにマスターに向かっていた


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