空の姫と海の王子
本来ならこの様な反乱が起きた場合
すぐに戦力を総動員して潰していたが
今回は状況が違っていた
彼等、SANは能力を持たない一般人だ
しかし今はどうだろうか
分厚い防弾ガラス越しにも伝わる
暖かくも冷たい挑発的な能力の波動
桁違いなその能力は男がずっと
探し求めてきた能力ーー空
「もう少し遅いと思ったのだが…まあいい。うまく餌に食いついてくれた様だな。」
「ようやくこの時が来ましたな。」
「この世界が我等のものになるのも近い。」
クツクツと気味の悪い笑みを浮かべながら
元老院の面々はこの状況を楽しんでいたが
男が窓に背を向け振り返ると
水を打ったかの様に静まった
男は胸元のポケットから
通信用の小さな水晶を取り出すと
通信の範囲をビルの全フロアに設定した
キン、と小さな音が全フロアに響くと
少しばかりの緊張が部屋に走った
「私だ。戦闘部隊はいつも通り全力で反乱分子を潰せ。情報処理部隊は反乱分子の中の能力者を探せ。」
「今回の戦いには、Sランク能力者を導入する。自分の力に自信の無い者は無理に戦って命を無為にする必要はない。避難し遅れた一般市民の救助に回れ。」
「尚、今回の戦いでは反乱分子の中に能力者の存在が確認されている。油断したものは命を落とすと思え。」
静かなフロア全体に響き渡る声は
EARTHの中にある士気を確実に上げる
威厳と落ち着きを兼ね備えた声だった
「この戦いは我々の最後の戦いとなるだろう、諸君の健闘を祈る。」
一際大きな声でそう告げると
各フロアでは大きな歓声が上がった
机の上に置かれた黒いコートを取ると
男は部屋を出る為にドアノブに手をかける
その様子に驚いた元老院を見ること無く
男はドアを開いて足を踏み出した
「今回は私も出る。あなた方には準備をお願いしよう。」
「御意。」
その言葉と同時に閉まった扉
男は楽しそうな笑みを浮かべて
EARTHの黒いコートに手を通した