空の姫と海の王子


「ひかり…!あなた何でここに「あんたらが逃げた後こっちは散々だったんだよ!!目が覚めたら誰もいねぇし!!あのジジイに聞いたら笑顔で、出掛けましたよとかほざくし!変な結界張ってあるからまさかと思って来たら殺されかけてるし!!ふざけんな死ね!!!」


肩を上下させて怒鳴ったひかりの勢いに
地面にへたり込んで目を白黒させる二人に
ひかりはまだ文句が言い足りないのか
口を大きくあける、が
そのまま言葉を大きな溜め息に変えた


「あー、また幸せ逃げた。なんなのもー。とりあえず、捕獲。」

「えっ、ちょっと!」

「おい!何だよこれ!」


バッとひかりが左手を真横に伸ばすと
一層暗い闇が二人を覆い隠した

煩かった声も消えて静寂が訪れると
呼吸を整える為に大きく深呼吸をして
目の前で首を傾げる少女を睨み付けた


「先輩?早くその人達殺さないんですかー?」

「煩い。それより、なんであんた達がこんなとこにいるわけ?わけわかん無いんだけど。」

「マスターの命でーす。リストの人物を殺すようにと。」

「命令?それってあんた達じゃなくてもこんなただの人間、すぐ殺れるっしょ。それ、貸して。」

「ああ!とっぷしーくれっとですよー!」


ひかりは少女に近づくと
胸ポケットに入っていた端末を取り
少女がふて腐れるのも構わずに
慣れた様子で端末のリストを開く

流れるようにリストを見終えると
少女の胸ポケットに端末を戻して
ぽんぽん、と頭を撫でる


「成る程ねー。情報ありがと。」

「先輩?どうし、」


少女の言葉は続かなかった
頭の部分を覆う暗い闇は少女から酸素を奪う
次第に膨らむ闇に飲み込まれながら
苦しそうにもがく少女を一瞥もせずに
ひかりは目を閉じて意識を集中させる


「…見つけた。」


ある気配を見つけると地面を蹴って高く跳ぶ
ビルを縫うようにその気配を追い掛ける


「おい!出せってうおお!?」

「…ひかり?それにあの子も…」


溶けるようにして闇が晴れると
そこは先ほどと変わらない晴天が広がり
春によくにた少女も、ひかりも消えていた


「…助けてくれた…のよね?」


少女の立っていたはずの場所に
残っていた僅かな闇は
二人に気付かれることなく消えた





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