空の姫と海の王子


少女と黒い影の距離は
もう僅か2mになっていた


「誰でもいいから助けてよおぉぉ!!」

「大人しく城に帰りなさい!!」


捕まえられる!と
黒い影がニヤリと笑って
少女に手を伸ばした時だった

どこからか
少し低めの声が響いた


「舞え、《雪花(セツカ)》」


ぶわっと現れた氷の花びらに
少女と黒い影は視界を奪われる

黒い影は舌打ちをすると
体から風を起こして花びらを消した

消えたのは花びらだけじゃない
追っていた少女も消え去っていた


「あいつら……帰ったら覚えてろよ……」


黒い影は縁なし眼鏡を上げると
背中から生えたコウモリのような
艶やかな漆黒羽根を広げて城に向かった


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