空の姫と海の王子


「……な…なんでえ……」

「なんで?それはこちらの台詞です。なぜこんな所にハル様がいるのですか?」


扉が開いて現れたのは
黒髪に縁無し眼鏡の大臣

真っ青なハルは思わず後ずさり

ハルにとって、大臣は天敵だ


……にっ逃げなきゃ
早く逃げなきゃ殺されてしまうっ!


無表情で歩いてくる大臣に焦り
ハルはすぐに自分の周りに風を起こした

はずだったのに、
風はすぐに消えてしまう

何度も何度も試すのに
風は跡形も無く消えていく

残ったのは疲れだけ


「ど…どうして……」

「無駄ですハル様。この部屋は¨そういう¨部屋ですから……さあ、早く出て下さい。朝食の用意ができております」


大臣は頭を下げて扉への道を空けた

いつもなら怒鳴る
いつもなら怒る

だから逃げるのに
なぜか今日は優しい


……気持ち悪い。


ハルはいつもと違う恐怖に震えながら
足早に部屋を出て行った


「……だいぶ、喰わせてしまったな」


残された大臣は舌打ちをすると
白い部屋をぐるりと見渡した


ハル様は何故ここにいた……?


大臣は疑問を抱えながら
白い部屋に鍵を掛け、自室に戻った


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