空の姫と海の王子
──花畑にあるもう一つの建物
立派な門を構えた大きな屋敷は
つい最近和風にリフォームしたものだ
広く、畳の匂いがする和室からは
日本庭園を思わせるような庭が見える
さっきまで泣きながら
逃げ回っていた少女は
緑茶を飲みながら和んでいた
「ふぁ〜。やっぱ日本人はお茶だよね〜」
「元日本人でしょう。全く……そろそろハルは空の姫としての自覚を持ちなさい」
「だってえ……礼儀とか歴史とか面倒くさいんだもーん」
少女──ハルが、ぷうと頬を膨らませると
春の隣に座る黒髪美人はクスリと笑った
胸まであるサラツヤの黒髪
端正な顔立ちに紫色の大きな瞳
春が可愛いなら、この少女は美しい
まさに絶世の美女だ
「ナナはいいな〜。そういうの無くて〜」
「あら、私もあるわよ」
「え?そうなの?」
「まあ、正しくは¨あった¨ね。もう全部終わったから」
そう言って微笑む少女──ナナ
やっぱりナナは最強だ……
ハルが唖然としていると
襖が開いて二人の男が入ってきた
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