空の姫と海の王子


──目の前の扉にそっと触れて
カイトは眉をひそめた

この扉の向こうはハルの部屋だが
扉には、いや、部屋全体に
強い結界が張られていた

結界は使用者によってそれぞれ違う

この部屋に張られた結界は
風を中心に様々な力を
混ざり合わせた結界

この結界を使う人物を海斗は知っている


「何やってんだあいつ……」


カイトは氷を中心にした結界
ナナは大気を固めた結界
リクは炎を結界としているが
この部屋の結界はハルのものだ

無理だと分かっているが
一応、扉を押してみる

扉はビクともしない

カイトは溜め息をつくと
キョロキョロと周りを見る


「あ」

「カイトっ!やっと見つけたわ!ちょっと頼みたい事があるのよ!」

「俺もナナに頼みたい事あんだよ」


走ってきたナナと
扉を指差したカイトは同時に言った


「扉開けて欲しいんだけど」
「扉を開けて欲しいの」


「「……は?」」


ポカンと顔を見合わせた二人

いまいち状況が分からなくて
カイトとナナは首を傾げた


「ハルの結界を破れるのはナナだけだろ」
「空と海の扉を開けられるのはカイトとハルだけじゃない」


「「……は?」」


またまた話がかみ合ってない

こういう状況に陥ると
どちらかが譲らない限り
延々と続く恐ろしい状況

さっさと譲れば話は進むが
この二人は残念な事に違った


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