空の姫と海の王子
──その頃、ハルは屋上にいた
眼下に広がる花々を見て
小さな溜め息をついていた
鍵返してもらわなきゃ
能力者狩りって何?
何でサラ達の事知ってたの?
……あの人、誰なんだろう
「分かんない事ばっかりだよ……」
色んな事がありすぎて
やらなきゃいけない事がありすぎて
だけど、心の中が曇ってて
何からやればいいのか
どうすればいいのか
難しくて、ハルには分かんない
「会わなきゃ」
分かるのはそれだけ
あの人に会わなきゃ
鍵を返してもらって
みんなで人間界に行って
由紀達を守らなきゃ
……ハルがやらなきゃ
ハルはギュッと唇を結ぶと
パンッと両手で頬を叩いた
ピリピリとした痛みが
決意を更に固めた気がした
少し深呼吸をして
両手を前に突き出す
「……よしっ!ハルさんを舐めちゃいけませんよっ!」
向こうから来ないなら
ハルが行ってやるもんねっ!!
空間術は苦手だけど……
きっと多分きっと何とか……する!!
力を集中させて高めると
両手に纏う空色のオーラが強く瞬いた
「お願い!!開いて!!」
ハルが大声で叫ぶと目の前の空間が歪んだ
そして徐々に姿を見せる扉に
ハルは更に力を送り続けた
慣れない力を使っているからか
普段よりも力の消費が激しく
春は軽いめまいを感じていた
やばっ保たないかも……
お願い……開けっ!!
力と共に想いを送ると
バンッと扉が勢い良く開いて
そのまま意識を失ったハルを吸い込み
現れた時と同じように徐々に姿を消した
パタリと扉の閉まる音と
ハルの額から落ちた汗だけが
静かな屋上に残っていた
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