空の姫と海の王子


「ジュエルって言ってねっ、能力者の中にいる精霊が武器に変化できる道具なんだけどー……ハルの心には精霊がいないから意味無くって……」


でも自分の為に作って貰った物だし
前は武器として使っていたから
思い出がいっぱい詰まってるんだっ

そう言ってハルは笑った


「……つか、いいの?大切な物なんじゃないの?」

「大切だけど……春のありがとうの気持ちだから」

「ありがとうの気持ち?」


俺は勝手に箱を奪って
好き勝手やってるだけで
感謝される事なんてひとつもない


少年が考えていると
ハルは小さく笑い目を伏せた


「前に話してくれたでしょ?サラとウタ……それに魔神様達を返してくれたのは君だって。嬉しかったの……みんなが無事でいてくれた事が。……ありがとーねっ」


俺の存在を空と海に教える為
これから始まる¨ゲーム¨
それの存在に気付かせる為
それだけの為に利用した神

ただ、それだけだ

それがそんなに嬉しいのか?

大切な物を俺に与える程に?


目を伏せるハルには見えていなかった
少年の瞳に黒い影が宿っていた事に

その影は、憎しみか怒りか
それとも……悲しみなのか


……分からない


少年はハルの頭をそっと撫でた

その手に力を込めようとして、止めた

少年の行動にハルは顔を上げ
少年の顔を見て首を傾げた


「……何で泣いてるの?ネックレス嫌だった?」


少年はそっと頬を撫でた

暖かい液体に指先が触れて
自分が泣いている事に気付いた

何故泣いてるのか

少年には分からなくて
とりあえず、笑ってみた


「嫌じゃないよ……ありがとう」


初めて言った感謝の言葉が
こんなに照れくさいなんて

初めて知った


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