空の姫と海の王子
少年が笑うとハルも笑った
少年はネックレスを眺め
ハルは湖を眺めながら口を開いた
「……そういえばね。ずっと聞きたかったの」
「うん」
「君は何者なの?とか、ここはどこ?とか、いっぱいあったんだけど……もういいやっ」
ハルが立ち上がると
少年の視線もそれを追う
ハルの横顔は悲しそうだった
だが、それもすぐに消えて
代わりに現れたのは強い意志
「ハルは大切な人達を守る為に人間であることを捨てて¨空の姫¨になったの。……何でもやるよ。みんなを守る為なら」
ハルには分かっていた
いや、感じていた
これから何かが起こると
また戦いが始まるのだと
そして、敵となるのは誰か
「君がどうしてそんな事をするのか……ハルには分かんない。だから、君が教えてくれるまで春は何も聞かない」
「そう……」
少年はそれしか言わなかった
視線をまたネックレスに戻すと
それを首に付けて、笑った
「今、俺を殺せば何も起こらないよ」
「それじゃダメなの。何も起こらないけど、何も変わらないから」
君が行動を起こすって事は
何かを変えたいからでしょ?
何かを変えなきゃいけないんでしょ?
それに、ハルは
「春は……君を殺さないよ」
その言葉と共に聞こえた
シュッと風を切る音
ハルの首に突きつけられた
少年の手刀の音だった
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