空の姫と海の王子
──ずっと一緒だった
上を見ると空があって
前を見ると海があって
下を見ると大地があって
存在している空間があって
過ごしている時間があって
どんなに長く離れていても
それだけは変わらなくて
僕らはずっと、一緒だった
だけど、変わってしまった
長すぎた歴史の中で
忘れ去られた真実と約束
きっと覚えているのは
俺だけなんだろう
──あなたは誰……?
──お前は誰だ
二人の言葉を思い出して
少年は悲しそうに目を伏せた
「お前らが覚えてなくても……俺は約束を守るよ」
小さく呟いた少年の声は
森の中で静かに響いて
黄金の瞳から零れた涙は
湖に波紋を作り出した
……始めよう
その為に、その為だけに
俺は生きてきたんだから
少年が深く深呼吸すると
大きな門が音もなく現れ
少年を通すと静かに消えた
「………」
森の奥から見ていた影に気付かず
_