空の姫と海の王子


二人の体を中心に風が吹き荒れる

ハルは巻き込まれないように
自分の体を風の壁で守る、が


「……あ、やば」


冷や汗を流したハルはポツリと呟くと
突如舞った無数の花びらを残し
その場から消え去った

¨桜吹雪¨
花びらで相手を錯乱させる内に
風に乗ってその場から移動する技

敵の前などで有効だが
何故身を隠す必要があるのか
リクには分からなかった


殺気が満ち満ちた和室は
さすがに居心地が悪いので
そろそろ帰るか、と
リクが立ち上がった時だった


「見つけましたよハル様……今日という今日はもう許しませんよ!」

「げっ!だ…大臣……!?」


リクの恐怖を含んだ言葉に
カイトとレンを包む風はピタリと止んだ


庭からこちらに歩いてくるのは
さっきまでハルを追い掛けていた
コウモリのような漆黒の羽根を生やした

黒い影──大臣

漆黒の髪に縁なし眼鏡の美形
見た目は20代に見えるが
本当の年齢は誰にも分からない

ハルとナナが消えた原因は
この大臣の気配を感じたからだ


大臣は部屋まで入ってくると
足元に落ちている桜の花びらを拾い
ビビるリクと冷や汗を流すカイトとレンに
ニコリと微笑みかけた


「……ハル様を見つけたら捕まえて下さいと、神々には伝えましたよねリク様?」

「あ…あはは……「それに今日は公務で天界へ行くようにと言いましたよねレン様?」

「え…そうだっけ……?「カイト様は先程私の邪魔をしましたね?どういう事でしょうか?」

「……あれ、ユラじゃ「ユラ様はずっと城にいましたよ」


一気にまくし立てると
大臣は大きな溜め息をついた

大きな溜め息の後は
大臣の怒りが収まるまで
ずーっと怒鳴られるのを
三人は嫌と言う程知っている


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