空の姫と海の王子
「かい……っ」
パァン!!
ハルが口を開くと同時に
部屋に満ちていた光が
突然、弾けて消えた
『何だ!?』
『分からない』
「光が……」
「消えちゃったぜ……?」
「……っ!ハル!」
再び暗くなった部屋に
カイトが急いで光を灯した
光が照らした光景に
カイト達は目を疑った
「な…んで……?」
しゃがみ込んだハルの手のひら
小さな海色の鍵の周りには
砕け散った空色の箱の欠片
¨空の鍵¨だけが壊れていた
有り得ない状況を前にして
カイト達は呆然と鍵の欠片を見た
ハルの手は震えていて
欠片がひとつ、床に落ちた
カチャリ、と小さな音が
静まった部屋に響いた
カイトはハルの側に行こうと
一歩足を踏み出して、止まった
ハルの側に行ってどうする?
大丈夫だって慰める?
こんな中途半端な優しさを
ハルは望んでなんかない
逆にハルを更に混乱させるだけだ
震えるハルに対して
今の俺は何もしてやれない
「───」
カイトの横を通り抜けたナナは
カイトに向かって小さく呟くと
そのままハルの側に行った
──カイトはハルの何?
彼氏なんだと、
恋人なんだと、
胸を張って言える訳がなくて
ただ黙って唇を噛み締めた
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