空の姫と海の王子
「ハル、大丈夫?」
「ナナ……どうしよう、鍵…鍵が……」
「大丈夫よ、落ち着きなさい」
いつの間にか開いた距離
いつの間にか離れた心
……違う
いつの間にかなんかじゃねえ
この距離を作ったのも
心を離したのも
「俺……?」
カイトの口から出たのは
とても小さな声だったが
隣に立っていたサラの耳に入るには
十分な大きさだった
サラは視線だけをカイトに向けると
ムッとしたように眉間に力を入れた
『お前は本当に、馬鹿者だ』
カイトにしか聞こえないように小さな声で
だが、怒りのこもった声で言った
「相手の胸の内を知るなんぞ、天使にしかできん。たとえお前が海の王子でも、同じだ。私だってお前の胸の内なんか分からない」
そもそも知りたいと思わないが
と言って、サラはそっぽを向いた
「知らないなら、知ろうとすればいい。分からないなら、聞けばいい。答えないなら、無理にでも吐かせればいい」
「吐かせればいいって……お前な……」
「お前はハルの心を知ろうとしたのか?」
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