空の姫と海の王子
「ごめんな」
ハルの前にしゃがみ込んで
目に溜まった涙を拭いてやると
すぐにまた涙が溜まった
愛おしくて
愛おしくて
今まで我慢してたのが馬鹿みたいで
「……っ…かい…とぉっ!」
飛びついてきたハルの背中を
ポンポンと、優しく叩いた
ごめんな
変な意地張って
お前の事困らせて
だけど、俺だって困ったし
あの男に、ヤキモチ妬いた
……認めたくないけど
だから、少しだけ意地悪する
「春が謝るまで、抱き締めてやんねえから」
驚いたように顔を上げたハルの顔は
涙でぐちゃぐちゃだけど、可愛い
少し口をぱくぱくさせたあと
涙をまた溢れさせて叫んだ
「ゔっ……ごっごめ゙んな゙ざい〜〜っ」
「しょーがねえな」
小さく笑って、すぐに抱き締めようと
左手を上げて、止めた
胸の中を占めていた
暖かい気持ちが消えて
変わりに現れた嫌な汗
「嘘…だろ……」
ハルのすぐ後ろ
俺の目の前
一年前、一度だけ見た
巨大な扉が現れていた
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