空の姫と海の王子
◆第二章
──ふと、顔を上げた
一年前まで、この世界には
夜空に光は存在しなかった
昼間でもそれは同じ
三つの世界の負の感情が
流れ込みやすいこの世界では
それが雲となって溜まっていき
空は常に黒い雲に覆われていった
空を見上げた時に
"太陽が眩しい"なんて
感じた事はなかった
だけど、今は違う
木々の間から射し込む
柔らかな月の光を感じて
リールはふう、と息をついた
ここは魔界の森の中
いつ魔物が襲ってくるか
分からないこの森の中で
気持ちを落ち着けられるとは
リールは思っていなかった
それほどまでに
月の光は美しく、優しい
だが、リールが空を見上げたのは
美しい月を眺める為ではなかった
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