空の姫と海の王子


リールは空をじっと見つめる

いつも変わらない空
そのずっと奥を見透かすように


彼女の背中に生えた羽根は漆黒
誰か見ても悪魔と間違えるだろう

しかし、悪魔の中で羽根を持つ者は少なく
その羽根はコウモリのようになっている

彼女の漆黒の羽根は
鳥のように美しい翼

天界に生きる種族"天使"だ

羽根の色は違うものの
彼女も天使特有の能力を持っている


全てを見透かす心の眼"千里眼"


だが、普通の天使では
彼女の瞳に映った光景を視る事は不可能だろう

持って生まれた能力のレベルが
彼女の場合は桁違いだからだ


『嘘……』


動揺のせいか
口が乾いていて声が掠れた


リールの視た光景

それは強制的に空間転移された
春達四人の姿だった


どうして?

誰がやった?


そこまで考えてハッとした

誰がやったかなんて
そんなのは決まっている

そいつを止める為に
リールはここに来たのだから


リールは胸に渦巻く怒りを抑え
更に深い森の奥へと走り出した


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