花語り-ハナガタリ-
今でもふっと思い出す苦い思い出がある。
堤防にタンポポが咲くこの季節になると……。
学校をサボって俺はよく、ランドセルを投げ出して堤防に寝そべり、空を見上げていた。
そんな俺の視界にふわっと舞った白い綿毛。
起き上がって振り向いた先には、数日前にクラスメートになったばかりの転校生の女子が居た。
少し黄色がかった髪に白い肌。
ハーフだった彼女はクラスに馴染めず、
「隣に行っても良い?」
学校に行くことを躊躇っていた。
「……うん、良いけど」
それから俺と彼女が仲良くなるのに、時間はかからなかった。
だから、俺は彼女を連れて学校に行こうって決意をする。
俺が仲良くしてれば、そのうち自然と他の奴も……。
なんて思ってたのに、
「おまえ、そいつのこと好きなんだろっ」
からかわれた恥ずかしさで、
「そんなワケないだろっ! こんな奴」
俺は、全力で否定してしまった。
それから彼女はすぐ、遠い私立の学校に転校していった。
久しぶりに堤防から見上げる空。
この空の下で、彼女は笑っているんだろうか……。
ふっと、空に思い浮かべた彼女の笑顔に……どこからともなくふわっと舞う白い綿毛が重なった。