顔のない恋
両目とも赤く腫れ上がっていたのだ

泣き腫らしたに違いない
とお母さんは思い
温かな紅茶をテーブルに置きながら

「どうしたの?」

静かに尋ねた。


お姉ちゃんは、目の前に置かれた紅茶に両手を沿え、柔らかく立ち上る湯気に視線を落とし、ゆっくりと口を開いた。

「私、…妊娠してるの」

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