学び人夏週間
私はどうしても気になって、急いで昼食を口の中に詰め込み、様子を見に走った。
どこへ行ってしまったのか知らずに飛び出してきたが、すぐに発見。
二人はまだぬかるんでいるはずのグラウンドで取っ組み合っていた。
田中先生が誘導したのだろうか。
そこなら物を壊す心配もないし、地面以外にぶつかってケガをする心配もない。
二人は何か言い合っているが、遠くてよく聞こえない。
田中先生は二人とは少し離れた階段のところに座っている。
「あ、お疲れさまです」
この事態が何でもないような軽い挨拶。
ますます彼のことが掴めない。
「お疲れさまです……」
パシッ! ズザザザザ……
目を離している透きに妙な音が聞こえたと思ったら、重森が地面に転がっていた。
学年はひとつしか違わないと言えど、中学生と高校生だ。
身長も体格も、飯島の方が少し大きい。
「ちょっと、止めなくていいんですか?」
私は焦った口調で問うが、田中先生は落ち着いた口調で一蹴する。
「まだ大丈夫ですよ」
ずいぶんあっさり言い放ってくれる。
この人、目の前で人と人が取っ組み合いのケンカをしているというのに、どうしてそんなに落ち着いていられるのだろう。
南先生は『たまに』と言っていたけれど、みなみ塾ではこういうことが頻繁に起こるのだろうか。