学び人夏週間
「ふざけんな!」
重森はすぐさま立ち上がり、飯島へと立ち向かう。
「お前には関係ないだろうが」
「うるせー! 黙ってられるかよ!」
二人は粗暴な言葉を交わしながら再び取っ組み合う。
掴んだり突き放されたり。
ケンカを売ったのは重森の方のようだ。
飯島は自尊心が高く、少しナルシストの気がある。
鼻持ちならないやつだが見た目はそこそこいいし、モテるかもしれない。
自尊心からか、後輩の重森に楯突かれてナメた口を利かれるのは我慢ならない様子。
ケンカを買ったというよりは、自身の顔を立てるために応じたといったところか。
「大事にできねーんなら別れろ!」
「大事にしてんだろ」
「どこがだよ!」
やはり原因は松野。
まるで「隣の山田くん」だ。
もしこれが物語なら、青春だなぁと微笑を浮かべて見守ることができるが、ケンカとは目の前で繰り広げられるとこんなにも怖いものなのか。
「わーまだやってるー」
「ほら、重森って……」
「そうそう、松野さんのことずっと好きで」
「あー、それで」
聞こえてきた声に建物の方を振り返ると、窓から野次馬の生徒が覗いていた。
二人が揉み合って踏みつけるグラウンドの土が、ジャリジャリと音を立てる。
「お前本当に好きなのかよ!」
「あー好きだよ。俺らは好き合ってんだよ。外野が口出しすんじゃねー!」