学び人夏週間
我ながら、極端なことを言ってしまった。
だけど、本当のことだと思う。
重森はなんだかんだと反発してくると思っていたのに、意外と納得している様子。
いつの間にやら松野も課題から目を離し、私の方を向いて話を聞いていた。
私は話を続ける。
「読書感想文って人が書いた文を理解して、自分の意見を書くものでしょ?」
「うん」
「自分がいいと思ったこと、好きだと思ったこと、嫌だと思ったこと、嫌いだと思ったこと。人は誰かと関わりながら生きていくんだし、そういうのを上手に伝えられるようにならないとね」
「あー、確かにね」
そう言って大人しくなった重森。
3回ペンを回して、真面目に課題を始めた。
どうやら私の説明に満足してくれたらしい。
……助かった。
「でも、本ってあんまり面白くないですよね」
ぼそっと松野が言う。
「読んでて疲れるっていうか……。読む気になれないんですけど」
「あー、俺も」
満足してくれたはずの重森まで賛同する。
松野の言う通り、活字は読んでいて疲れることもある。
特に絵で感覚的に捉えられるマンガなんかより、頭を使わないと読むことができない。
でも。
「それってたぶん、自分にとって面白い本に出会ってないだけだよ」
私は自分のバッグを漁り、一冊の本を取り出した。
古本屋で100円で購入した、薄めの文庫本。
古い小説だ。
それを松野に手渡した。