学び人夏週間

カラカラとスライド式の扉が開く音がした。

「なーにそんなとこで突っ立ってんの?」

聞き慣れた声のした方を向くと、俊輔がこちらに向かって歩いてきている。

小谷先生は逆方向へ歩いていってしまった。

「あは、あはは」

笑ってごまかすことしか思いつかない。

「なにその笑い。気持ち悪っ」

俊輔はそういっておかしそうに笑った。

普段なら言い返す、気にすることのない冗談。

だけど「気持ち悪い」というのがグサッと胸に刺さり、傷ついている自分に気づく。

私、気持ち悪い?

私はなにも言えず、そのまま無言で俊輔のもとを去った。

「なんだよ……」

俊輔がぽつりとつぶやいたのが聞こえたが、私は無視して歩き続けた。



風呂上がりの生徒たちからシャンプー類が香る、午後7時。

待ちに待った夕食のスタートだ。

生徒たちの後にトレイを持って給食を受け取り、テーブルにつく。

私の隣には俊輔が座った。

「なあ、何かあった?」

白々しく聞いてくる彼に腹が立つ。

あんたこそ、私に言わなきゃいけないことがあるんじゃないの?

「別に」

私は不機嫌丸出しで言って視線を逸らした。

素直じゃないことも可愛くないこともわかっているが、そうせずにはいられなかった。

私が不機嫌になると超頑固になることを知っている俊輔は、あっさり諦めて食事に集中する。

私たちはそれ以上会話をせずに食事を済ませた。

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